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【司法書士が解説】「てにをは」1文字のミスで300万円の損失!自筆証書遺言の「安物買いの銭失い」な失敗例|解決事例

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状況

相続の手続きは、亡くなった方の最後の意思表示である「遺言書」があるかどうかで、その後の流れが大きく変わります。

今回、新横浜相続手続き相談室にご相談いただいたのは、亡くなった親族が残した自筆証書遺言を手に、不動産と預金の名義変更を希望されていたお客様でした。

遺言書はすでに「検認」を終えていた

お客様が持参された自筆証書遺言は、すでに家庭裁判所での「検認」手続きを終えていました。

検認とは、家庭裁判所で遺言書を開封し、その形状や内容を記録することで、後日の偽造や変造を防ぐための証拠保全手続きです。

多くの方は「裁判所で検認を受けたのだから、この遺言書は100%有効で、そのまま全ての手続きに使えるはずだ」と考えがちです。

しかし、実はここに大きな落とし穴があります。検認はあくまで形式を確定させるものであり、その内容が法的に妥当か、あるいは各金融機関の実務に耐えうるかまでは保証してくれないのです。

たった一文字、「助詞」の書き損じ

当事務所の司法書士が遺言書の内容を精査したところ、致命的な書き間違いが見つかりました。

本来であれば「全ての財産を(長男に相続させる)」と記載すべき重要な一節が、あろうことか「全ての財産の(長男に相続させる)」となっていました。文末が繋がらない「の」という一文字のミスです。

客観的に読めば、遺言者が全財産を特定の相続人に譲りたかったことは推測できます。しかし、厳格な形式と正確な文言が求められる法律実務の世界では、この「の」という一文字が、相続手続きの歯車を狂わせる巨大な障壁となって立ちはだかることになったのです。

司法書士の提案&お手伝い

この不明確な文言が含まれる遺言書をそのまま各窓口に提出しても、門前払いされるリスクが非常に高い状態でした。そこで当事務所の司法書士は、専門的な知見に基づき、以下の二つのアプローチを軸にした解決策を提案しました。

1. 不動産登記に向けた「上申書」の作成と提案

不動産(土地・建物)の名義変更を行う法務局での手続きについては、過去の判例(最高裁判決など)において「遺言書の解釈は、遺言者の真意を尊重すべきである」という指針が示されています。

文脈から判断して、遺言者が全財産を譲る意図があったことは明白です。

そこで司法書士は、法務局に対し「本遺言書の『の』は明らかな誤記であり、遺言者の真実の意思は相続にある」という事情を法的に構成して説明する「上申書(じょうしんしょ)」を添付して登記申請を行うことを提案しました。

2. 金融機関への一斉打診とリスク説明

一方で、金融機関(銀行・信託銀行など)の対応は法務局以上にシビアです。銀行は、不備のある遺言書に基づいて払い戻しを行い、後から他の親族から「あの遺言書は無効だ」と訴えられるリスクを極端に嫌います。

各銀行には独自の法務判断基準があるため、実際に書類を出してみるまでは結果が分かりません。

司法書士からは、「まずは全ての金融機関に対して遺言書を提出し、粘り強く交渉を試みる。もし拒否された場合は、別の法的手段(裁判など)を検討する必要がある」という、厳しい現実も含めたロードマップを提示しました。

お客様には、安易に「大丈夫です」と楽観的な見通しを伝えるのではなく、起こりうるリスクと費用を正直に共有した上で、一歩ずつ手続きを進めるお手伝いを開始しました。

結果

司法書士が伴走し、各機関との交渉を進めた結果、対照的な二つの結末を迎えることとなりました。

不動産登記は無事に完了

法務局への申請においては、司法書士が作成した詳細な「上申書」が功を奏しました。遺言書に一文字の誤りはあるものの、遺言者の真意を汲み取るべきとする判例の考え方が受け入れられ、無事に不動産の名義変更を完了させることができました。お客様も、まずは住まいの権利が確保されたことに安堵されました。

金融機関の対応は「明暗」が分かれる

問題は預貯金の解約でした。手続きを進めた3行のうち、1行は司法書士の説明に理解を示し、「文脈から遺言者の意思が確認できる」として解約に応じてくれました。

しかし、残りの2行は最後まで首を縦に振りませんでした。 「この文言では法的に不明確であり、一文字でも誤りがある以上、銀行として払い戻しに応じることはできません。もし進めたいのであれば、他の相続人全員の同意書(実印と印鑑証明)を提出するか、裁判所で確定判決をもらってきてください」という、極めて硬直的な回答でした。

最終的にかかった「300万円」の代償

他の相続人の協力を得ることが難しかったため、これら2行の預金を取り戻すには、弁護士を立てて裁判を起こすしかありませんでした。

銀行側と争い、最終的に和解することで預金の解約には成功しましたが、そのために費やした弁護士費用や裁判関連のコストは、合計で約300万円にものぼりました。

自筆証書遺言という、一見「安上がり」な方法を選んだ結果、たった一文字のミスをリカバーするために、新車の高級車が一台買えるほどの多額の費用と、多大な精神的労力、そして長い年月を費やすことになってしまったのです。

司法書士のポイント

今回の事例は、相続実務において非常に示唆に富む、かつ痛切な教訓を含んでいます。相続を控えている皆様に、専門家の視点から特にお伝えしたいポイントは以下の3点です。

1. 「てにをは」のミスが人生を左右する

自筆証書遺言は、手軽に作成できるのが最大のメリットです。しかし、法律文書としての厳格さを欠いた場合、その代償はあまりにも大きくなります。

今回のような「の」と「を」の違い、あるいは「相続させる」と「遺贈する」の使い分けなど、素人目には些細に見える「てにをは」のミスが、銀行の窓口では決定的な拒絶理由になります。

ご自身で作成される場合は、必ず専門家によるリーガルチェックを受けるべきです。

2. 「安物買いの銭失い」にならないために

公正証書遺言の作成には、数万円から十数万円の費用がかかります。

これを「高い」と感じて自筆で済ませる方が多いですが、今回の事例のように、不備があった際にかかる費用(弁護士費用300万円など)に比べれば、公正証書の作成費用は極めて安価な「安心料」と言えます。

公正証書遺言であれば、公証人という法律のプロが作成するため、一文字の誤りで手続きが止まることはまずありません。

3. 金融機関の壁は想像以上に高い

「裁判所が検認したから大丈夫」「司法書士が説明すればなんとかなる」という期待は、現在の銀行実務では通用しないケースが増えています。

コンプライアンスやリスク管理が厳格化されている現代において、不備のある遺言書は「ただの紙切れ」扱いをされることすらあります。

まずはお気軽にご相談ください

相続手続きは複雑で、ご不安も多いことと存じます。「何から始めればいいか分からない」「自分の書いた遺言書で大丈夫だろうか」そんなお悩みはございませんか。

新横浜相続手続き相談室の無料相談では、専門家がお客様のお話を丁寧に伺い、課題を整理します。今後の最適な流れや費用についても分かりやすくご説明し、解決への道筋を具体的に示します。無理な勧誘は一切ございませんので、まずはお一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご連絡ください。

お客様の大切な財産と想いを、一文字のミスで台無しにしないために。私たちが全力でサポートいたします。

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この記事の執筆者
司法書士佐伯啓輔事務所 代表司法書士 佐伯啓輔
保有資格 司法書士、民事信託士
専門分野 相続、遺言、生前対策
経歴 司法書士佐伯啓輔事務所代表。 平成24年4月、新横浜に「司法書士佐伯啓輔事務所」を開業。親身で解りやすい解説に定評があり、大手ハウスメーカーや企業福利厚生部門、会計事務所でのセミナー・相談会実績多数。相続発生前の『争いの予防』、相続発生後の『心理的負担の軽減』を様々な角度から提案し、相談者からの信頼も厚い。

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